UP 2012.6.21 ISH
2012年地球環境シンポジューム
「生物多様性」の実践教育
〜自然体験観察園の活動をもとに〜

■日時:2012.6.16(土) 13:30〜16:30
■場所:花博記念公園鶴見緑地 花博記念ホール(陳列館ホール)
■主催:大阪市立環境学習センター(生き生き地球館)
■後援:朝日新聞社
■運営協力:NPO法人 シニア自然大学校
■入場者:約80名
■スタッフ:環境科
生物多様性に関する先進的な取組や今後の環境教育ぼあり方の講演と今年度から大阪市内の小中学校で
活用されている副読本「おおさか環境科」を活用した体験型環境教育、教育現場での課題などについて、パネル
ディスカッションを通じて考える。

開会を前にした会場風景

地球環境シンポジウム進行次第

◇13:30  開会挨拶  生き生き地球館館長    浅尾 公一
◇13:35  講師紹介  シニア自然大学校代表理事 齋藤 隆
◇13:40  基調講演  渡辺 弘之先生(京都大学名誉教授))
            「環境教育と生物多様性 分っていない種数」
◇14:10  講演     花田眞理子先生(大阪産業大学 人間環境学部教授)
            「大阪のこどもたちに伝える生物多様性」」
◇14:25  講演     河合典彦先生(大阪市立城陽中学校教諭)
            「生物多様性と環境教育」
◇14:40   講演      風と緑の会(シニア自然大学校)中本宗治氏
                 休憩
◇15:05  パネルディスカッション
         司会  渡辺 弘之先生
              花田眞理子先生
              河合 典彦先生
              風と緑の会
◇16:30  閉会挨拶  シニア自然大学校代表理事 齊藤 隆
      
       司会進行   シニア自然大学校理事 田中 晃
                                

館長の開会挨拶

講師紹介

本日の講師の先生

・基調講演 「環境教育と生物多様性 分っていない種数」 
種数と絶滅種数
 環境教育は場所によりいろいろ違ってくるが、自然に親しむ事からはじめるのは間違いのないことです。川をきれいにして初めて海もきれいになってくる。川を守る活動 が大切になってくるのです。”親水公 園”として京都の鴨川がありますが、一方で水の事故を恐れて”よい子は川で遊ばない”などの立て札がかかっていることがあり  ますが、これには違和感があります。地球上に生存する生物の種数は、   約140万種とされていますが、アマゾンの熱帯林の昆虫調査や、今まで生物が生存できな いといわれていた深海にも多くの生物が生存していることがわかり、これらが新種として登録されると生物種は   2億種にもなるといわれ、今まで地球上のわずか1% にしか名前がつけられていないことになり、とても生物がわかっているとはいえないことになります。 絶滅種数についても、年間4万種以上が絶滅して いるといわれて いるが、名前も付けられていない種があるのに、何種が絶滅したとはいえない。
生物多様性理解には分類学が必要
 身近なところ、たとえば土の中にも多くの生物がいるのだが分類が難しく研究者もいない。話題にもならない研究だが一生をかけるものとなる。このように日本の生物  のでもまだ十分には調べられていな いことを強調しておきたい。
貴重な資源と文化の消失
 もっとも生物相の豊富なところは熱帯林といわれているが、その熱帯林が消えている。多様な少数民族がそこで衣食住すべてを森から得て、生活に密着した知識を持 っている。すなわち、どれが食べら  れ、どれが毒で、どれが病気や怪我に利くのか、またその加工、場所、時期、取り過ぎないルール”タブー”も存在している。その森 がなくなっている。
少数民族・先住民
 少数民族・先住民は大きな民族に同化・吸収され固有の言語を失い森の知識も消えてしまっている。それは地球人類が持つ貴重な体験、知識、文化が失われることで、一度失われれば復活はできない のである。
・講演 「大阪のこどもたちに伝える生物多様性」 
大阪市では、小中学校の授業のなかで、持続可能な社会づくりに向けた環境教育のための教材「おおさか環境科」を作成し、『生物多様性』『地球温暖化』『循環』『エネルギー』『都市環境保全』の5分野について、小学校中学年、小学校高学年、中学生をそれぞれ対象とした教材3分冊にまとめた。「おおさか環境科」を作成する過程で腐心したのは、どうすれば小中学生のこどもたちが、自分も生態系の中の一つの環であり、自分たちの暮らし方がいかに生物多様性に影響を与えているかを理解できるか、生態系への配慮を忘れずにに行動できる人になってくれるか、ということでした。そのために、さまざまな「大阪の自然や生物の現状」を紹介し、身近な環境を見つめなおし、興味をもって調べていけるような、大阪らしさてんこ盛りの教材作りを心がけた。
 目指す人物像  人の暮らしと自然など環境との関わりについて理解し環境を行うこととした。
 推進方法   小中学校の理科や社会等の授業を通じて教えていく。
 発達段階に応じた進め方
まず・・・体験を通じて感性を養う。 次に・・・課題を発見し調べ、理解し、計画する。 さらに・・・行動や実践を通じて社会に働きかける。  そして・・・自ら考え、判断する。

・講演「生物多様性と環境教育」 
 
「生物多様性」を体感するために 〜話題提供の流れ〜
1.地球環境を正しく認識する
 社会教育活動や学校での教育活動を通じて正しい認識をさせる。例えば親子自然観察会、親子ネイチャースクール、淀川水生生物調査、淀川河川レンジャー、西  中島のヨシ原保全などである。
2.「場」としての環境保全・再生・創生
  地域の自然体験ができる場の保全活動としては淀川(国土交通省)での城北ワンド群、十三干潟があり、再生・創生活動としては、淀川(国土交通省)の河口域の  干潟再生事業、大川(大阪府)の水辺の構造を垂直護岸から緩傾斜の水陸移行帯(水辺エコトーン)に変更する事業がある。
 環境は生き物が評価してくれるものである。
3.外来生物と生物多様性
  学校教育での扱いはH24年度から中学校の理科で「外来生物(外来種)」が必修となる。
  国や自治自治体の取り組みとしては、淀川での外来生物駆除があり、外来生物としては、ナガエツルノゲイトウ、オオアカウキクサ、オオクチバス、カダヤシ、ミシシ  ッピアカミミガメ、アメリカザリガニがある。
4.自然体験活動が少年の情操面に与える影響
  情操面では命の大切さ、自然に対する感性、達成意欲への影響が大きい。自然体験活動を多くしている青少年の特徴は問題解決能力や豊かな人間性など「生き  る力」があり、道徳観、正義感のある者が多く、体力に自信が付き、環境問題に関心が熱く、得意な教科の数が多いとの資料がある。
  そういった意味からも、多様な生態系を有する淀川水系の再生と次世代への継承が重要である。

 ・講演「自然体験観察園での体験活動紹介  

開園は平成10年6月、今年で15年目となる。田んぼのエリア、体験広場、雑木林のエリア、野草広場、有用植物の庭と約1.4haの広さがある。「農事体験と自然教室」は小学生30〜40名と保護者で田んぼや畑での農作業や収穫体験、収穫した農作物に関する学習や体験、その振り返りと発表を行っている。農事体験行事としては4月の苗代作りとレンゲの野遊びから翌年2月の麦踏みとウドン作りまでと盛り沢山となっている。
<パネルディスカッション>

質問書の中から直接質問者の生の声が聞きたいという司会者の指名があり,質問の詳細説明があった。その他、飛び入り質問へも懇切丁寧な回答があった。

Q1.小学校1、2年の教科書にアメリカザリガニが(親しみのある生物として)載っていて、中学校教科書では(排除すべき)外来種として記述されているのは、教育上   一貫性がないのでは。
A1.(河合)現実的には子供の発達段階に伴って外来種の影響を教えていく必要がある。
A1.(花田)写真付きで外来生物として載せているが、外来種が入ってくると生態系への影響があることを小学生の子供たちにも教えていく必要がある。
Q2.(今日紹介された)DVDに大阪にないリュウキュウマダラが出ているが大阪にないはずだが。
A2.大阪市内で撮影されたのは確かだが、どこかは不明です。
Q3.なぜ高等学校のものはないのか。
A3.どうしたら使ってもらえるのかに苦労したため、中学のものはデータを多様し、高校のものは更に難しくなるため時間と予算の制約があった。高校では一般成人の   調べ方のほうが良いと判断した。他の自治体からもかなり感心をもたれている。
Q4.今まで使われていない副読本が多かったが、「おおさか環境科」が今後多く使われる見込みはあるのか。また、柴島浄水場・水道記念館が閉鎖になったが、今    後どう活用されるのか。
A4.これを作る時に多くの小中学校の先生と教育委員会に加わってもらっており、何かを行うときに一緒にこの副読本を使い、このように使っているとかの事例もあげ   てもらい、DVDも充実させていく。
   柴島の資料館閉鎖は非常に残念です。短期間のベネフィットで閉鎖すべきではない。儲からないから公共で行う必要があると思います。
Q5.水陸移行帯の事業は重要と思いますが、他に予定されている計画はあるのか。
A5.国の大淀地区に干潟を作る事業は途中で止まっている。大川(旧淀川)は大阪府の管理で桜ノ宮付近の整備計画を行っている。個人的には大阪の街中にヨシ    が茂るようにしたい。
Q6.環境教育では「命」を教えるのが大事ではないか。理科教育だけでなく、命の大切さを教える必要があるのでは。
A6.(花田)今回は生物多様性がテーマだったので紹介はしなかったが、「おおさか環境科」では命について扱っている。生物の生長についてや水環境についても扱   っている。
A6.(風と緑の会・松岡)毎週日曜日に自然観察会を行っている。第5週は命について自然観察を2年前からやるようにしている。学習園で命を育て、その命を食べて   私たちは生きていることを子供たちと一緒に学んでいる。
Q7.環境教育で親子での活動に参加しているが、次に伝えていくことが大切と思う。副読本を感心ある人たちに配布するようにできないか。
A7.配布は予算的に難しい。来年度は学校現場でもPDFダウンロードしなければならないかも。

閉会挨拶

<環境科スタッフ活動>


開会前の注意事項の説明

環境科スタッフの事前打合せ

終了後の片付け作業
文/環境科 北仲、写真/北仲、石井、編集/石井

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