UP 2017.7.16 HRY
2017年7月環境科野外活動
成ヶ島の自然と環境
■日時:平成29年(2017年)7月14日(金) 天気 晴れ
■集合:8:00 梅田第4ビル前
■行先:淡路 成ヶ島
■交通:バス会社ジョイックス(KMバス)
■参加者:26名
■案内:成ヶ島を美しくする会代表/花野晃一、環境科/村瀬りい子
「成ヶ島」は大阪湾の入口、洲本市由良地区にある小さな島ですが、大阪湾のガラパゴスともいえる生物多様性に富んだ無人島です。ここではすでに姿を消した絶滅危惧種にランクされている生き物などをたくさん見ることができます。一方でこの島はゴミの島だったのです。海岸には大阪、神戸、瀬戸内、四国方面から漂着した膨大な量のゴミが打ち上げられ、島の豊かな自然が環境汚染に晒されていました。 しかし、地域の人々やボランティアの保全活動で、今ではたくさんの生物を確認できるようになりました。温帯のマングローブともいわれるハマボウの咲く時期、成ヶ島を訪ねました。

                             行程

 08:05 梅田第4ビル前発 貸切バス(阪神高速神戸線〜淡路鳴門自動車道〜洲本IC)
      途中淡路SA休憩
 10:40 洲本市由良港着 渡船
 10:55 成ヶ島着、成ヶ島概要説明(花野ガイド)
 11:15 昼食
 12:00 成山登山、自然観察(花野ガイド)
 12:30 成山下山
 12:50 ハマボウ林、海浜見学(村瀬ガイド)
 14:15 渡船
 14:20 由良港出発
 15:00 津名たこせんべいの里 休憩
 15:30 帰路(津名IC〜淡路鳴門自動車道〜阪神高速神戸線)
 17:30 大阪駅西口着 解散 

成ヶ島地図案内資料
 梅雨明けを思わせるお天気。梅田第4ビル前に集合したのは26名と49人乗りバスには贅沢な旅です。若干遅れてのスタートになりました。バス内で世話役加藤さんから成ヶ島の植生に関する資料を、また本日ガイドをお願いした村瀬さんより自作の植物写真満載の資料配布と行程などの説明がありました。環境科としては2010年以来2度目の成ヶ島です。7年たって島はどう変わったでしょうか。

村瀬ガイド

明石海峡大橋を淡路島へ

由良港到着
渡船
 阪神高速の渋滞で成ヶ島の到着が遅れそうなので当初帰路に寄る予定であった「奇跡の星の植物園」見学は割愛し、成ヶ島での滞在時間を延長することにしました。約20分遅れで由良港に到着、待ち構えていた船で島へ渡る。僅か100mほどの海峡で泳いでも渡れそうですが、波が荒いと欠航です。定員15人なので2回に分かれて渡航しました。ありゃ、仕出し弁当がまだ届いていない。弁当待ちの時間に島ではもう観察が始まり、集合写真も撮影する。結局、早飯を食べて、午後から島めぐりとしました。
*地理的特徴:成ヶ島は大阪湾の入口に位置する淡路島東端の小島です。地形は北側の成山(標高50m)と南側の高崎を結ぶ3kmの砂州によって形成され、由良瀬戸側は外洋性の砂礫海岸、由良湾側は潟干潟からなる自然海岸です。また島の中央部には塩沼池、塩沼湿地が存在します。成山山上からの眺望は素晴らしく、かつて淡路橋立と呼ばれた成ヶ島を一望できます。(以下*印は現地案内板等から抜粋引用)

渡船場と成ヶ島

定員は15人

成ヶ島到着

成ヶ島海岸で
成山
 成ヶ島を美しくする会代表花野さんから成ヶ島の歴史や貴重な植生について説明がありました。なんと絶滅危惧種500種のうち100種がこの島に存在するそうです。まずは島の最高峰成山(標高50m)に登ります。足の弱い人のために軽トラを準備していただき、80歳以上5人がお世話になることになりました(中に1人若い人がいましたが)。ありがたいですね。徒歩組は4つの登山コースうち最も厳しい直登コースを登ります。鬱蒼たる照葉樹の森の中、15分ほどの登りでしたが、途中の崖地に棲むアカテガニ、ヤマタニシを発見しました。
*歴史:成ヶ島は江戸中期に淡路島を治めた徳島藩が造ったもの。当時成山と高崎は淡路島とつながり、今の砂州にわずかに港への入り口が開いていた。港まで大きな船を通すため藩は1765年と89年頃二つの小山を淡路島と切り離し水路を開削した。明治時代には大阪湾を守る軍事的要衝とみなされ、成山、高崎に砲台がおかれた。戦後は潮干狩りや釣り人で賑わったが1986年に国民宿舎が閉鎖されると人々の足は遠のいた。美しくする会は賑わいを取り戻そうと、砂州に5000本の松を植えたがうまく育たず、代わりに希少な動植物がいることが分かり、無人島として多様な生態系の保全に活動の力点を切り替えた。

成ヶ島を美しくする会代表花野さん

成山登山へ 軽トラに5人乗り込む

登山路はウバメガシの林

崖地にアカテガニの子供

樹の洞に隠れるアカテガニ

ヤマタニシ
山上展望台からの景観は素晴らしく、大阪湾から紀淡海峡・友ヶ島と、由良港を守るように伸びる成ヶ島の砂州を眺めることができました。天の橋立になぞらえて淡路橋立と呼ばれる由縁です。花野さんからはくにうみ神話から始まる歴史の説明がありましたが理解できた人は何人?現役時代は大手電機会社の技術者であったという花野さん。博識の方です。

クニウミ神話を聞く

紀淡海峡を航行する船舶(対岸は友ヶ島)

成山展望台で(前列中央花野さん)
海浜の植物
 成山を下山して、海浜の動植物観察に向かいます。島ではマドンナと呼ばれる村瀬さんの案内です。ハマボウ、ハマユウ、ハマゴウ、ハマヒルガオ、ハママツナ、ハマナデシコなどハマの名前がつく植物が多いことです。とりわけ満開となったハマボウが群を抜きます。ハマボウ林を背景に集合写真を撮る。
*生態的特徴:成ヶ島は大阪湾の宝島と呼ばれていますが、その理由は豊かな植物相と豊富な海岸動物にあります。最近の調査によれば植物はハマボウ、ハママツナ、ハマウツボなどに代表される貴重な海浜・海岸植物を主とし約300種類の植物が自生しています。また由良湾内には大阪湾では数少ないアマモの繁茂が見られます。海岸動物相も豊かで、ハクセンシオマネキ、アカテガニ、ハマガニ等カニ類や、アサリ、サクラガイなどをはじめ約500種類の貝類が確認され絶滅危惧種に指定されている貝も多く生息しています。また初夏には瀬戸内海岸側でアカウミガメの産卵も見られ、夏の夜には浅瀬でアカテガニの誕生も観察できます。

植物観察 ハマゴウの群落

ハマボウのお迎え

満開のハマボウ

満開のハマボウ林で
漂着ごみ
 海岸に出てみます。思ったよりゴミが少ないです。沖合に張られているフェンスのためでしょうか。いや、地元の漁師さんやボライティアの皆さんの清掃活動のお陰です。干潟にはハママツナが群生しています。秋には草もみじが楽しめるそうです。砂州はずーつと高崎灯台まで伸びています。剛の者はこの先2km以上ある岬の突端まで歩いて来たとのことです。
*漂着ごみ:大阪湾には時計回りの緩やかな流れが存在するため、この流れに乗って漂流したゴミが自然海岸の残る成ヶ島や対岸の友ケ島に多く漂着・堆積し、美観を損ねるだけでなく海浜植物や海岸動物の生育を脅かしています。ペットボトルなどの生活ゴミが多く、主に近畿地方から遠くは中国・四国地方からも流れてくることが分かりました。成ヶ島の豊かな自然を守るために、「国立公園成ヶ島を美しくする会」の清掃活動や由良中学校の「成ヶ島クリーン作戦」が地元の人々、洲本市の協力の下で行われていますが漂着するゴミの量はなかなか減りません。環境保護のためにゴミのポイ捨てはやめましょう。

海岸線

漂着ごみは意外に少ない

砂州を歩く

淡路橋立
帰路
 じりじり照りつける太陽と潮風にやられて皆さんお疲れのようです。早めに船を呼んで、帰着することに。バスの冷房で生き返りました。船頭ご夫妻の御見送り、花野さんからのお茶とオレンジの差し入れをいただき帰路につきました。途中たこせんの里で休憩をとり、大阪駅にほぼ予定どうり無事到着。
 成ヶ島の自然と環境を考える旅でしたが皆さんのご感想はいかがだったでしょうか。無人島にしたからこそこれだけの自然が残ったのだという花野さんの言葉が印象的でした。

船頭ご夫妻と花野ガイドの見送り

たこせんで休憩

明石海峡大橋を本州へ

成ヶ島の植生

マイカメラの写真です。詳しくは村瀬さん提供の資料をご覧ください。


ハマボウ

ハマゴウ

ノラニンジン

ハマナデシコ

ハマユウ

ハママツナ

テリハノイバラ

ミヤコグサ

オニユリ

カタバミ

アマモ

きりぎりす浜にハマゴウ乱れ咲く     二三弥

梅雨晴れ間ハマボウ咲きぬ成ヶ島     良徳


文/平山、俳句/鈴木・加藤、資料/村瀬、写真/平山・大野、編集/平山
企画3班:加藤・平山、協力:村瀬
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