UP 2019.6.5
兵庫県宍粟市 西日本最大クリンソウ群生地見学会

目 的

昨今は、各地で鹿や猪などによる被害が報告されており、山野草が消滅しております。

しかし、ちくさ湿原には、兵庫県レッドデータブック/Bランク指定されている国内最大級のクリンソウ(サクラソウ科)が、近年40万株(15ha)も確認されております。

何故突然群生地が出現したのか、現地見学をとおして、「自然と環境」について考えます。


行 程

1.午前:「たたらの里学習館」見学

2.昼食:12:20~13:00(たたらの里学習館にて)

3.午後:「ちくさ湿地クリンソウ群生地」散策

 

 

8:08 梅田第三ビル前出発 ➡中国自動車道へ(加西SAにてトイレ休憩)

ともかく野外活動は、天候が一番に気になりましたが、今日は大丈夫で、快適なバス旅となりました。

      かっては渋滞で宝塚を抜け出すまで、時間が読めませんでしたが、大変順調でした。

      車窓の風景も、連休時とはすっかり変わり、ニセアカシア(白色)、ミズキ(白色)、ホウノキ(白色)、センダン(紫色)
      キリ(紫色)、ヤマフジ(藤色)などが、彩を添えていました。
   


西播磨地域では、古代から宍粟市や佐用町を中心に「たたら」とよばれる鉄づくりが盛んに行われておりました。「たたら」とは、砂鉄を木炭で燃やすことで、砂鉄から鉄を取り出す方法です。明治初期に西洋から鉄鉱石をコークスで燃やす近代的な製鉄技術が伝わるまで、「たたら」による鉄づくりが行われていたのですが、それは鉄づくりに適した良質な砂鉄と木炭の材料となる豊かな森林に恵まれていたからとのことです。

 

10:00 山﨑IC➡県道➡10:50 ボランティア/大山様と合流➡「たたらの里学習館」へ

「たたらの里学習館」は、三室山(みむろやま)、後山(うしろやま)などの県境の山々の緑に囲まれた千種川源流、天児屋川のほとり、標高約650㍍程のところにありました。

11:00 到着

早々に「たたらの里学習館」概略をビデオで学んだり、大山様のレクチャーを交えながら、館内の資料について、ご説明を伺いました。

 

館内には、隣接する「天児屋鉄山跡」の遺跡を復元した模型や宍粟鉄で作られた名刀、農機具等も展示されていました。

また、解説ビデオによって、たたらの歴史や工程について学習したり、「たたら唄」を聞くこともできました。



①ビデオで学ぶ「たたらの里」

②大山様にご案内頂きながら
③館内見学 ④館内展示品

11:40 「天児屋鉄山跡(てんごやてつざんあと)(兵庫県指定史跡)の遺跡を見学

    たたら製鉄が行われていた場所は、「鉄山跡」と呼ばれており、

昭和19年地質調査で、宍粟市全域でたたら製鉄が行われていたことが判明しています。

鉄山跡は、市内全域273ヶ所確認されており、足元にも、鉄滓(てっさい)=「かなくそ」と呼ばれているものが、沢山おちていました。

 

たたら製鉄は、多量の木炭を必要とし、長年同一場所で操業すると、近辺の雑木林がなくなり、木炭の運搬に困難をきたしたため、新しい場所を次々と求めたのだそうです。

鉄山跡は、中世の山城を思わせるような豪壮な石積みがなされておりました。

 

水路や湿地などで、クリンソウを見ることが出来ましたが、少し早かったようです。

所々にシカの糞を確認。猪のラッセル痕もありました。



⑤クリンソウ開花

⑥クリンソウ
⑦「天児屋鉄山跡」の見学会 ⑧「天児屋鉄山跡」の見学会
⑨高殿跡 ⑩「天児屋鉄山跡」の説明中

12:20~13:00 昼食・・・学習館やその周囲を利用。

    一帯は、昨年度豪雨台風被害による倒木や川の氾濫による爪痕も残ったままでした。

    が、キビタキ(夏鳥)が鉄山跡水路や天児屋川で採餌しており、鳴き声もとっても心地良く、
他にツツドリ、ホトトギス、カケス、コゲラ、ウグイスやメジロなども確認でき、いつまでも鳴き声が耳に残っておりました。

 

13:00 集合写真 ➡ 移動




13:15~14:45 「ちくさ湿地クリンソウ群生地」散策

到着後、早速整備された遊歩道約1.5㌔の道のりを大山様のご案内で散策しました。

一部は、昨年の豪雨復旧工事中で立ち入り禁止でしたが、大黒天~寿老人~弁財天コースを約一時間、谷筋や湿地のクリンソウ群生地に沿って歩きました。

 

沢山のクリンソウの株数は確認できたのですが、お花は何とか我々に合わせて(?)、咲き始めたばかりでした。花は花茎を中心に円状につき、それが数段に重なる姿が仏閣の屋根にある「九輪」に似ていることが、名前の由来になっているのですが、まだ2~3段位だったでしょうか。(見頃は5月末頃のようです。)

 

遊歩道沿いでは、ウワミズザクラ、ヤナギ、タニウツギ、ウツギ、コバノガマズミ、ホウノキ、モチツツジ、ヤマツツジ、コバノミツバツツジ、ヤブツバキ、アセビ、ハンノキ・・・などの花々を確認できましたが、まだ若葉も芽吹き始めたばかりでした。(写真参照)

また、クリンソウ以外の山野草なども楽しみにしていたのですが、フタリシズカ(つぼみ)、ハルリンドウ、ネコノメソウ、カンアオイ、シハイスミレ、シロスミレ、オウレン、ツルリンドウなどを、かろうじて見つけた次第です。

林は下草が少なかったようにも思えました。山野草には、まだ早かったのでしょうか。

それとも鹿などが下草を食べているのでしょうか。大変気になりました。

     サクラソウ科は、アレルゲンを持つことが多く、その毒性からニホンジカなど草食動物は回避するといわれていますが、奈良春日山など、シカの
        個体数増加により、近年各地でクリンソウの食害事例が、上がっております。 
   



⑫遊歩道~クリンソウ湿地散策開始~

⑬遊歩道散策
⑭ハルリンドウを1株発見 ⑮湿地の所々でクリンソウを確認
⑯クリンソウ群生地にて ⑰ミズキ開花

15:00 集合写真後、帰路につく

    道の駅「ちくさ」にてトイレ休憩

    山﨑IC➡中国自動車道➡名塩SA(トイレ休憩)・・・ここまで大変快適に戻ってきたのですが、塚本付近事故渋滞とかで、約30分のろのろとなってしまいました。

 

17:30 大阪駅到着後、解散。

 

  宍粟市千種川沿いでは、黄花のジャケツイバラ(つる性落葉低木)が随所で咲いていました。 イワガラミ、ツルアジサイ、マタタビなどとは異なり、下向きの鋭い棘が大変危険です。
放棄田跡や沢筋などに、はびこっており、車窓よりの景観は見た目大変きれいなのですが、クズ以上に手入れは厄介なのです。山間地の森林整備の在り方、高齢化問題などを、垣間見ました。

 

  クリンソウは、たたら製鉄(ちくさ砂鉄)を採るための「鉄穴流し場(かんなながしば)」跡や、 湿地などに分布しておりました。

時代の移り変わりの中で、放置された「たたら」の沢筋や湿地を好むクリンソウが、ジワッジワッと分布を広めて、今日に至ったようです。
しかし、この地が今後どのように変化してゆくかを、見守って行きたいものです。

 

そんな「鉄と自然と人間」が作り出した宍粟の魅力を再発見することができた一日でした。



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