up 2022.4.19 HRY
大和川 亀の瀬資料館と竜田古道を歩く
河内堅上駅〜亀の瀬資料館〜竜田古道〜三郷駅
◇日時:2022.4.15(金) 曇
◇集合:10:00河内堅上駅
◇行先:亀の瀬、竜田古道、明神山(有志)
     大阪府柏原市/奈良県三郷町
◇参加者:自然と環境科 13名+OB 3名

大和川亀の瀬
 亀の瀬は、大阪府と奈良県の府県境付近の大和川が大阪平野に抜けようとする狭窄部に位置しています。竜田越えと知られ古来から大和となにわを結ぶ交通の要衝でしたが、地すべりが起きる地域として恐れられてきました。最近では明治36年(1903)、昭和6年(1931)、昭和42年(1967)と大規模な地滑りが発生し、特に昭和6年(1931)では大和川がせき止められ奈良県側は水没、また大阪鉄道(旧国鉄)の亀瀬トンネルが地中に埋まってしまいました。以降60年以上にわたって大規模な地滑り対策が行われています。資料館で地すべりを起こすメカニズムや防災対策について学び、竜田古道を歩きました。健脚有志は明神山(274m)へ登り、地すべり地帯の全貌を俯瞰しました。
行程:
・一般
 河内堅上駅10:05〜関西本線鉄橋(土木遺産)10:18〜亀の瀬資料室見学(10:28〜11:00)〜排水路トンネル見学(11:05〜11:20)〜旧大阪鉄道亀瀬隧道見学(11:30〜11:45)〜資料室(11:50〜昼食〜12:30)〜竜田古道〜大正橋13:00〜三郷駅13:10・・・歩行3.5km
・有志
 大正橋13:00〜明神山藤井コース登山口13:15〜参道13:58〜明神山(14:15〜14:35)〜参道〜明神4丁目バス停15:02/15:04〜奈良交通バス〜王寺駅15:20・・・・歩行4.0km(全歩行7.0km)
Route Map (GPS) 歩行約7km(全コース)
「亀の瀬」 
 新型コロナの感染者が高止まりして今日も近畿では8,000人を超えています。河内堅上駅に集合したのはマスク姿の現役13名と前年度卒業のOB3名です。駅員1人の寂しい駅ですが、亀の瀬が日本遺産に選定されたということで駅舎には幟がはためき、案内のパンフレットが置いてあります。天気曇で今にもぽつぽつとやってきそうですが午後からは回復するという天気予報を信じて出発です。踏切を渡り、大和川右岸を遡っていきます。対岸にそびえる丸い形の山が明神山274mで頂上から亀の瀬の全貌を見ることができます。有志は午後登山する予定です。大和川にかかる鉄橋(第4大和川橋梁)は土木遺産です。川を斜めにわたり、鉄橋がトラスト鉄橋の上に乗っています。列車がこの橋を渡る風景がパンフレットを飾っています。沿道に廃屋が多いのは地すべり地帯だからでしょう。クサフジ、タンポポを愛でながら歩くこと20分で国交省大和川河川事務所地すべり資料室に到着です。眼下に蛇行する大和川、亀の瀬をみる位置にあります。

日本遺産の幟はためく河内堅上駅

丸い形の明神山

鉄橋(第4大和川橋梁)は土木遺産

大和川亀の瀬

亀の瀬地すべり資料室
「亀の瀬地すべり資料室」
 国交省大和川河川事務所亀の瀬出張所平松所長の説明です。亀の瀬は大阪と奈良を分ける山系の中で最も低い位置にあり、奈良盆地を流れる多くの川が大和川一本になるところ。古来から交通の要衝であったが、地すべりで気味の悪い道であったこと。生駒山系の隆起スピードが金剛山系に比べ早かったために生駒側が地すべりを起こして、大和川が金剛側に押し出されいること。「がけ崩れ」、「土砂崩れ」、「地すべり」の違いをしっかり理解すること。地すべりは横滑りでがけ崩れ等に比べスケールが大きいこと。昭和6年の地すべりでは関西本線(旧大阪鉄道)の亀瀬隧道が埋まり、対岸を走るルートに付け替えられたこと。地すべり対策としては、すべり面上の土砂を取り除くこと(排土)、くい打ち(抑止)、水抜き(排除)であり、すでに60年以上を費やしていること。1千億円を投じても、被害予想額4.7兆円と比べるとまだ安い等シニアにはわかりやすい説明でした。

亀の瀬のロケーションを説明する平松所長

地すべりで崩壊した亀瀬隧道

資料室内

地すべり対策
「排水トンネル」
 次いで、道路を挟んで反対側にある排水トンネル1号を見学します。排水トンネルは集水井や集水ボーリングで集められた地下水を大和川亀の瀬へ流します。全部で7本あるそうで、すべり面よりも下の固い地層に掘られています。トンネル奥深く入ります。ライトアップされたトンネル内部は幻想的です。中央に集められた地下水が流れ、両端が通路になっています。天井の小さな管が集水ボーリングです。支線もあり、網の目のように張り巡らされているそうです。200mぐらい奥まで進み戻ってきます。亀の模様のある入口で集合写真を撮りました。

排水トンネル

奥深く進む

支線もある

1号トンネルの前で、左端平松所長
「旧大阪鉄道亀瀬隧道」
 再び道路を渡って、資料室の下、大和川との斜面にある旧大阪鉄道亀瀬隧道に行きます。途中にある集水井15号深さ17mに立ち寄りました。隧道はH20年になって発見されたものです。進入路を奥に入ると隧道と斜めにぶつかります。長さは100mぐらいでしょうか、レンガ積み(フランス式、イギリス式)の壁、天井で天井が黒く焦げているのは汽車の煙です。行き当たりは崩れた土砂に埋まっています。これ以上掘り進むと危険です。

集水井15号、深さ17m

旧大阪鉄道亀瀬隧道(右)

亀瀬隧道

行止り 崩れた土石
「竜田古道」
 会議室をお借りして昼食をとった後、お二人が帰りました。竜田古道を三郷町へ歩きます。約2kmです。古道と言ってもその面影はなく、車も通る舗装道路です。僅かに竹藪の中の道と峠八幡神社(無人)が名残を残しています。三郷町の大正橋で三郷駅へ向かう4人と別れ、明神山へは10人が登ることになりました。石垣、白壁塀、倉のある古民家の残る藤井集落を過ぎると登山口です。

竜田古道 峠八幡神社

竜田古道 竹藪の道

大正橋より 関西本線第3大和川橋梁(土木遺産)を見る
「明神山」
 息を切らせながら500段といわれるプラスチック階段を登っていきます。約40分で明神山参道に出ました。麓の明神町から2車線もありそうな舗装道路が山頂の水神社へ続いています。参道を歩くこと15分で展望台のある山頂へ到着しました。参道途中に亀の瀬地すべり地帯を望む小広場があり説明版がありました。鳥居をくぐると水神社のある広場で、展望デッキが広場を取り巻いています。曇り空ですが360度の展望です。亀の瀬を分けて大阪平野と奈良盆地が見え、地すべり地帯のロケーションがよくわかります。そのほか、西に淡路島、明石海峡、六甲、北に信貴山、生駒山、矢田丘陵、東に比叡、若草山、奈良盆地大和三山、南は大峰山系、二上山、葛城、金剛です。それぞれ展望絵図がありますので山々を同定できます。無料の双眼鏡では法隆寺の5重の塔、大仏殿まではっきり見えました。

約500段のプラスチック階段を登る

明神山参道

参道の亀の瀬展望広場

亀の瀬地すべり地帯(左:大阪、右:奈良)、遠方に信貴山、生駒山

亀の瀬を挟んで西に大阪平野

東に奈良盆地

明神山展望デッキで
 展望を楽しんで、参道を明神山バス停へ下ります。約30分で、発車間際のバスに乗り込むことができました。亀の瀬のロケーション、古来から地すべり地帯である理由、長年に渡る対策工事など地すべりがいかに恐ろしい災害であるかを理解できました、ご案内いただいた平松所長さんありがとうございました。
亀の瀬の地滑り退治山笑う    良徳

YouTube
文・写真・編集/平山

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